「臥龍梅」蔵便り   平成十六年師走菅原杜氏

拝啓 今年もいよいよ押し迫ってまいりましたが 皆様いかがお過ごしでしょうか。全国的に不順な天候が続いておりましたが、ここへきてようやく寒気もいちだんと厳しくなり、酒造りに相応しい季節になってほっとしております。

蔵の近況をご報告いたします。まず、富山県産五百万石55%の純米吟醸を連続10本仕込みました。次に、大仕込みの本醸造を6本ほどはさんで仕込み、先に仕込んだ純米吟醸を上槽したところで、二巡めの55%の純米吟醸の仕込みに移っております。12月9日現在で、通算20号、静岡県産山田錦の4本目の添えを仕込んだところです。その後は、備前雄町、滋賀山田錦と続きます。先日入荷した備前雄町と滋賀山田錦の写真をご覧ください。両方とも55%精米ですが、それぞれの酒米の特長がよくでており、ことに滋賀山田錦はなかなかの出来のようです。酒になるのが楽しみです。滋賀山田錦備前雄町
酒米といえば、先日開かれた恒例の酒造講話会で、静岡県農業試験場の研究員の方から新しい酒米の育成について報告がありました。山田錦の新種で、収量と玄米の品質・粒大は山田錦並み、タンパク質含量も山田錦並みに低く、心白の発現は山田錦より多く、丈は山田錦より平均24pも短い品種だそうです。「静系(酒)88号」という仮称で呼ばれております。県内の蔵元に販売されるのは2年後の予定ですが、当社はさっそく購入希望の手を挙げておきました。「短かん渡船」に加えてもうひとつ楽しみが増えました。

ところで、ここらで趣向を変えてお酒とは別の話題に移りましょう。欧米では12月といえばクリスマス、クリスマスといえばクリスマスキャロルに代表される幽霊話(ゴーストストーリー)と相場が決まっております。変人扱いされるのが不安でこれまで内緒にしてきましたが、実は小生、怪奇幻想文学を趣味赤い館
としております。自分で読むだけでは飽き足らず、厚かましくも翻訳まで手を広げました。数年前にはイギリスのH.R.ウェイクフィールドという作家の書いた「赤い館」という怪奇小説の短編集を仲間と共訳で出版いたしました。(国書刊行会刊 定価2,400円) ぞっとするような怖いお話が載っております。シーズンにちなみ、この本を先着7名様にクリスマス・プレゼントとして進呈いたします。ご希望の方は電話でもFAXでも結構ですのでご住所とお名前をご連絡ください。(0543-66-0839 fax0543-66-0380) 版元より直送いたします。

さて、恒例の純米吟醸袋吊り雫酒は大好評にて完売間近です。次の発売は年明けとなりますので、まだお求めでない方はお早めにご注文下さい。
気ぜわしい毎日ですが、どうぞご自愛のほどを。                      敬具

平成16年12月吉日                                 鈴木克昌

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