『臥龍梅』 蔵便り   平成十八年弥生

拝啓 寒さもようやく衰え始め、しのぎやすい季節になってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
小生は毎年この時期になると何となく落ち着きません。興津、清見寺の臥龍梅はもう咲いただろうか、気がつかないうちに散り始めているのではないかと気になり、三日とおかずに寺に通っています。その甲斐あってか今年はどんぴしゃり、満開のタイミングで写真を撮影することができました。何しろ昨年はろくに開花せず、臥龍梅もそろそろ寿命かと気をもんでいただけに、一安心です。
ところで、弊社には臥龍梅のほかに、もうひとつ梅にちなんだ名前の「鶯宿梅 おうしゅくばい」という銘柄があります。おもしろい逸話が残されておりますのでこの機会にご紹介しましょう。わが鈴木家の初代は市兵衛と申しました。その市兵衛が酒造用の良水を授けたまえと稲荷の神に祈願したところ、満月の夜、稲荷大明神が鶯と化して浅間山麓に導き、梅の枝に止まるという霊夢を見ました。そこで実際に梅の木の下を掘ってみますと清泉が湧き出てまいりまして、当家は酒造りを始めることができました。時に貞享3年(1686年)のことです。市兵衛は稲荷大明神に感謝してお酒を「鶯宿梅」と名づけるとともに、浅間山の頂上に稲荷神社をお祀りいたしました。以来300年以上にわたり当家では酒造業を営むとともに稲荷神社を守ってまいりました。小生で16代目になるのですが、毎年、春と秋の縁日には市内栄松院のご住職を招いてお祭りを催しております。我が家の自宅の裏山なのですが、どなたでも参拝していただけるように参道を設えてあります。失せ物を見つけるのにご利益があるとのことで、見つけてもらった方の手でときどき油揚げが上げられております。当家でも、おめでたいことがあった時には鳥居を新築してお供えしております。この春、長男が何とか大学に進学することが決まりましたので、赤い鳥居がもうひとつ増えることになりそうです。

さて、「甑倒し」が終わって酒造りも一段落すると、ぼつぼつお酒の会のシーズンが始まります。今年は各種イベントの先陣を切ってリーガロイヤルホテル東京の主催する「春の宵 生であう 美酒で逸盃」に参加します。3月22日(金)の19時〜21時、場所は早稲田大学のお隣、リーガロイヤルホテル東京、会費は一人8,800円です。まだ若干お席に余裕があるそうですのでお問い合わせは宴会予約係、03-5285-8962まで。

今月は、お待たせ山田錦50%精米の吟醸無濾過生原酒と山田錦55%精米の純米吟醸袋吊り雫酒をご案内いたします。是非ともお試し下さい。
天地躍動の春、皆様のご健康とご活躍をお祈りいたします。                 敬具
平成18年3月吉日                                 鈴木克昌 

 

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