「臥龍梅」 蔵便り  平成十九年睦月

拝啓 当地、静岡はここ数日間、時ならぬ暴風雨にみまわれました。東北地方や日本海側では大雪の予報が新聞に報じられておりますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。

さて、お正月と言えば、初詣。弊社では、毎年、会長が会社を代表して京都の松尾大社に参拝に行くのを恒例の行事としてまいりましたが、さすがに10年も続けると趣向を改めたいとの本人の弁で、今年は一念発起して小生が次男を連れてお参りに行ってまいりました。お正月と言っても蔵は稼動しており、何かと用事があって遠出をしたことはなかったのですが、社長が醸造祈願に行った経験がないのでは話になるまいと思い立った次第です。3日の朝、杜氏とその日の打合せを済ませ、8時半に清水を発ちました。便利なもので、11時過ぎには京都駅に着き、タクシーで松尾大社に直行して11時半には山門の大鳥居の前に立つことができました。松尾大社を訪れるのはほぼ30年ぶりくらいですが、さすがに正月とあって参道は参詣客でごったがえしております。参道の両側には屋台がぎっしりと立ち並び、平時の鄙びた印象はかけらもありません。大半の参詣客は本殿の前でお賽銭を投げてお参りしておりますが、わざわざ京都まで来たからには特別ご祈祷をお願いしなければなりません。社務所で受付を済ませ、控えの間で順番を待っておりますと、最後に受付してもらったのに何といちばん最初に呼ばれました。そこから本殿まで案内をしてもらう道すがら、神主さんに「臥龍梅さんですか、美味しい
お酒ですね、いただいておりますよ」と話しかけられて2度びっくり。京都市内に何軒か特約店さんはあるのですが、まさか松尾大社の神主さんからそう言われるとは思ってもおりませんでした。こいつは春から縁起がいいわいといった気分です。無事ご祈祷も済ませて帰ってまいりましたので、必ずや今年も美味しいお酒ができるものと存じます。

さて、平成19年の新春は、お待ちかね、「短稈渡船 たんかんわたりぶね」を用いた純米吟醸酒をご案内いたします。この蔵便りでも何回か書いてまいりましたが、このお米は山田錦の父方の親にあたる品種で、半世紀以上前に姿を消した幻の酒造好適米です。滋賀県近江八幡市の農業試験場にたまたま残っていた僅か一握りほどの種籾を契約農家に依頼して3年がかりで増やしてもらい、昨年秋にようやく仕込みにまでこぎつけたものです。そのお酒を、新年の訪れとともに上槽し、皆様にお届けできるようになったのはまさに蔵元冥利の一言に尽きます。皆様、弊社が独自に復刻した幻のお酒を是非ともお試し下さい。

寒さのおりから、おかぜなど召しませぬように。                     敬具
平成19年正月吉日                                鈴木克昌  

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