「臥龍梅」 蔵便り  平成十九年如月


拝啓 立春とは申しながら、まだまだ寒い日が続いております。皆様お元気でお過ごしでしょうか。

まずは製造関係からご報告いたします。昨年10月1日の大安吉日に杜氏以下蔵人4名が蔵入りし、
10/10に1号の添えを仕込んで以来、約3ヶ月。出品用の大吟醸の酛を管理しながら年末からお正月までの間一息ついたのは別として、蔵人は休みなしで造りに精を出してきました。2/3現在で44号まで仕込みましたので、先が見えてきて、やれやれといったところです。40%精米の大吟醸の上槽まであと10日ほどになりました。純米吟醸酒も、富山五百万石に始まって、短稈渡船、誉富士、備前雄町と続いて山田錦に移れば今年予定の酒米をとりあえずひととおり手がけたことになります。この頃になると疲れもたまるせいか、風邪をひいたり事故を起こしたりしがちです。自宅にいるような訳にはいきませんが、それでも不足がちなビタミンCを補うために果物を差し入れたり、暖のとれる鍋料理を支度させたりといった配慮も必要となります。何と言っても事故なく一冬を終えることが大事で、そうでなくては美味しいお酒を造ることも出来ません。
さて、新年早々、1月9日に蔵にお客様がみえました。当社では原則として蔵見学はお断りしておりますが、誉富士でお世話になっておりますので「県こめ室」からの依頼とあっては無碍にことわるわけにもいきません。当日来場されたのは、石神さん、神田さんの女性2名+西澤さん男性1名の計3名で、石神さんは「こめ室」に勤務する県職員、神田さんは司会・リポーター業でTV等に出演するかたわら、唎き酒師でもあり日本酒会「駿河地酒や」を主催する才媛、最後の西澤さんはもともと米行政に携わった県の職員で、リタイヤー後は「食と農のかけ橋倶楽部」の代表を務めながら「幻の骨付きハム伝道師」を名乗る趣味人です。誉富士の酒米としての可能性について調査するのが来場の目的でした。ところが、ご三方とも事務所に入るなり誉富士と一緒に吊るしてあった短稈渡船の稲穂の長さにびっくり仰天。何しろ誉富士の倍ほどあるのですから。ひとしきり短稈渡船について話が盛り上がってから誉富士の話題に移りましたが、非常に熱心に菅原杜氏に質問していたのが印象的でした。こうして郷土の地酒を応援してくださる方もいるかと思うと、頑張らなくてはとファイトが湧いてきます。
さて、今月は備前雄町と誉富士の純米吟醸酒をご案内いたします。甲乙つけがたい出来ですが、ことに今年の雄町は近年にない出色の出来ばえと自負しております。是非ともお試しください。
春とは言えまだまだ寒い二月のこと、皆様おからだをたいせつに。             敬具
平成19年2月吉日                          鈴木克昌

 

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